アルノー・デプレシャン



世界はシネマテーク?!アルノー・デプレシャン『そして僕は恋する』



<アルノー・デプレシャン Arnaud Desplechin>

『本当の人生は 映画の中にある。
僕はどんなことがあっても映画を信じている。
もし映画がなかったら世界もない。』


トリュフォー、ロメールといったフランス恋愛映画の豊かな遺産を受け継ぎながら、独自の世界を築き上げたアルノー・デプレシャン。“トリュフォーの再来”“カラックスを凌ぐ映像作家”と謳われ、ヌーヴェル・ヴァーグを超える新たな才能を持った映画監督としての賛辞を一身に受けるフランスの俊英。1960年、ルーベ生まれ。両親はベルギー人。1984年、イデック(IDHEC/パリ高等映画学院-現FEMIS)を卒業。演出と撮影技術を専攻。学友であるエリック・バルビエ「La face perdue(失われた顔)」、エリック・ロシャン「女の存在」などの短編に協力しながら、数々のTVコマーシャルにカメラ・オペレーターとして参加。以降も、イデック(IDHEC/パリ高等映画学院-現FEMIS)の同窓生とコラボレーションが多く、仲間意識、連帯感が強く、盟友パスカル・コシュトー筆頭に、さらには同世代の役者たち(エマニュエル・ドゥヴォス、マリアンウ・ドニクール、マチュー・アマッルリック、ロランス・コート)を含めた映画ファミリー、デュプレシャン組を形成している。お馴染みの役者さんたちが出てくると感情移入しやすいわけで、パリの若者たちに圧倒的に支持されるのも頷けますね。




83年には自身の中篇作品「La polichinelle et la machine a coder(道化と暗号機械)」を完成させトゥールとリールの短編映画祭に出品。85年には16mm長編「Le couronnement du monde(世界の戴冠式)」をカンヌやオルレアンの映画祭で発表。一方でロシャンの長編デビュー作「愛さずにいられない」の脚色も担当する。
91年に若手俳優(ティボー・ド・モンタランベール、エマニエル・サランジェ、マリアンヌ・ドニクール、エマニュエル・ドゥヴォスら)デプレシャン組を大挙起用した中篇「二十歳の死」をアンジェ<プルミエ・プラン>映画祭に出品し、熱狂的な反応を引き起こす。同作品で最優秀ヨーロッパ長編映画作品賞、もっとも期待される若手に送られるジャン・ヴィゴ賞を獲得。92年に初の長編「魂を救え!」(カンヌ映画祭正式出品)を発表。95年にはマチュー・アマルリック、キアラ・マストロヤンニら若手のホープを起用した「そして僕は恋をする」を完成させその評価を不動のものとした。6月に新作「キングス&クイーン」の日本公開を控えている今、もっとも期待される旬な映画作家!




そして僕は恋をするComment Je me suis dispute…〈Ma Vie Sexuelle〉

監督 アルノー・デプレシャン
出演 マチュー・アマルリック エマニュエル・サランジュ ティボー・ド・モンタランベール エマニュエル・ドゥヴォス マリアンヌ・ドニクール ほか
脚本 アルノー・デプレシャン エマニュエル・ブ-ルデュー
撮影 エリック・ゴティエ



ポール(マチュー・アマルリック)、29歳。高等師範学校で哲学を修めたエリートのはずだが、もう何年も博士論文を出せないまま、講師の座に安住してすでに数年。さらに、相性のよくない恋人エステル(エマニュエル・ドゥヴォス)と、ズルズルと10年間も交際中だが、実は一番の親友であるナタンの恋人であるシルヴィアという美しい女性に恋をしていた。さらにシルヴィアの兄の恋人ヴァレリーも気になる存在だった。ポールは三人の女性との恋に悩み始めるが……。大学の講師でそこそこの収入と人生に甘んじるポールの悩みとは? サンジェルマン界隈を舞台に卓越した演出力が光る滑稽で切実な恋愛模様。彼を取り囲む女優陣も豪華で、「哀しみのスパイ」のエマニュエル・ドゥヴォス、「百一夜」のエマニュエル・サランジェ、「パリでかくれんぼ」のマリアンヌ・ドゥニクール、「プレタポルテ」のキアラ・マストロヤンニ(父はマルチェロ・マトロヤンニ、母はカトリーヌ・ドヌーヴ)が色を添える。 主演のマチュー・アマルリックは96年度セザール賞最優秀新人男優賞を獲得。アルノー・デプレシャンのその名を不動にした名作。
178分と長尺ながら、その瑞々しい映像センス、精緻な演出にぐいぐい引き込まれシネフィル・オヤジ(青年も)どもの共感を呼んだモラトリアム青年(オヤジ)ものの傑作だァ!!!



<マチュー・アマルリック Mathieu Amalric>

1965年10月25日、フランスのヌイイ=シェル・セーヌで生まれる。父は「リベラシオン」紙の記者、母は「ル・モンド」紙の書評家というインテリ一家に生まれる。父の仕事の関係で世界中の各地を転々とする。その折、グルジア滞在中に知り合ったオタール・イオセリアーニの作品に出演。以来、映画に魅せられシネフィル的生活を送る。デプレシャン組の中核をなす。「そして僕は恋をする」でセザール賞最優秀男優新人賞受賞。自身も「Mangt ta soup」(97)、「ウィンブルドン」(01)を監督し注目すべき若手監督の一人として次代のフランス映画を担う存在である。
 




<マリアンヌ・ドニクール(arianne Denicourt)>

1966年5月14日仏パリ生まれ。
パトリス・シェローが主催するナンテールの演劇学校で学び、在学中にジャック・ドワヨンの「恋する女」(87)に主演し強い印象を残す。その後もリヴェットの「美しき諍い女」(91)、「パリでかくれんぼ」(95)と、リヴェット作品でも個性的な美しさで活躍。私生活において、かつて、デプレシャンと時間を共にしていた女優でデプレシャンのフィルム(「二十歳の死」「そして僕は恋をする」)に欠かせなかった女優。一方、小説『Mauvais génie』(『汚れた天才』)を発表している。この本の内容は、デプレシャンは二人の関係をモチーフに、「人の人生を盗む」かのように『王たちと王女』を制作したという暴露本的小説らしい?。妹は監督として活躍するエマニュエル・キュオー。

アルノー・デプレジャン DVD-BOX

フランス的饒舌さ、自己告白、自己弁護、自己弁護、自己韜晦、ナルシスム...

楽天日記:ヌーヴェル・ヴァーグ最期の1ピース, ジャン・ユスターシュ監督の『ママと娼婦』も合わせてご覧ください。



二十歳の死La Vie des Morts

監督 アルノー・デプレシャン
出演 ティボー・ド・モンタランベール ロジェ・レボヴィッチ エマニュエル・サランジュ マリアンヌ・ドニクール  ほか
脚本 アルノー・デプレシャン
撮影 エリック・ゴティエ



 20歳のパトリックが散弾銃で自殺を図った。昏睡状態が続いている。同年代の従兄弟、友人たち、彼らの親たち……、彼を案じて集まった一族は予期せぬ休暇を授かったように再会し、やがてそれぞれの抱く生と死の境への不安定な感情によって緊迫し研ぎ澄まされた時間を共有する、デプレシャンの鮮烈なデビュー作!91年プルミエ・プラン映画祭最優秀ヨーロッパ短篇映画脚本賞受賞、同年ジャン・ヴィゴ賞受賞した傑作中編。52分。



<エマニュエル・サランジュ Emmanuel Salinger>

1963年、パリ生まれ。1985年、イデック(IDHEC/パリ高等映画学院-現FEMIS)に入学し、編集と監督法を専攻。88年卒業し学友デプレシャン、ルヴォフスキと映画を撮り始める。92年「魂を救え!」では主演と同時に脚色に参加し、セザール賞の有望若手男優賞を受賞。



魂を救え!La Sentinelle

監督 アルノー・デプレシャン
出演 エマニュエル・サランジュ ティボー・ド・モンタランベール ジャン=ルイ・リシャール ほか
脚本 アルノー・デプレシャン
撮影 カロリーヌ・シャンプティエ



 アルノー・デプレシャン記念すべき長編第一作!父の死を契機にドイツからパリへ戻る列車でマチアスは突然身柄を拘束される。釈然としないまま解放され帰国した夜、彼は自分の荷物から見知らぬ人間の頭部のミイラを発見する。法医学の研修生として学ぶ研究室に持ち込んだ頭部へ知らず知らず執着してゆく彼は独自に分析を始め、頭部のミイラの身元探しによってポスト冷戦時代の西欧の禁忌に触れてゆく・・・。不条理な荷物検査から1人の若者が大きな政治的な陰謀に巻き込まれて行く青春?サスペンス。



レイコ・クルック作の、象徴的なミイラのど頭。超リアル!

 F・ラングを思わせる陶酔的な心理描写によって緻密な謎へと誘い込むデプレシャンならではの世界を構築した傑作。C・シャンプティエが担当した沈み込むようなローキィ映像の緊迫感と随所にうかがえるユーモアが絶妙。瑞々しい若手俳優と共にジャン=ルイ・リシャールら名優も見応えあり。原題は『歩哨』。144分。



エスター・カーン めざめの時

監督・脚本:アルノー・デプレシャン
製作:パスカル・コシュトー クリス・カーリング
脚本:エマニュエル・ブルデュー
撮影:エリック・ゴティエ
美術:ジョン・ヘンソン
音楽:ハワード・ショア
衣装:ナタリー・デューリンクス
原作:アーサー・シモンズ

出演:サマー・フェニックス イアン・ホルム ファブリス・デプレシャン
フランシス・バーバー ラズロ・サボー ヒラリー・セスタ



19世紀末のロンドンを舞台に、演劇に魅せられ女優を目指す孤独な少女エスターの成長を描く物語。 英作家、アーサー・シモンズ(1865~1945)の短編小説を原作にイギリスに乗り込んで、19世紀末の英国演劇界を舞台にして作り上げた上質の女性映画。故リバー・フェニックス、ホアキン・フェニックスの実妹であるサマー・フェニックスが、ヒロインに扮している。



19世紀末のロンドン、寂しく灰色の建物が立ち並ぶ街で生まれ育ったエスター。彼女は誰にも心を開かない頑なで孤独な少女だった。しかし、この心を閉ざした少女に光を投げかけたのは演劇であった。



女優を目指す彼女に、老優のネイサン(イアン・ホルム)は言う、「君にはなにかが欠けている。救いは君の手の中にあるんだ、世の中を拒絶するな。恋をしなさい」-初めての恋と<演じること>は彼女の孤独な魂を救うのであろうか・・・。
蛇足ながら、作中で多用されるアイリス・イン、アイリス・アウトという、カメラの絞りの開閉によりシーン変わりを示す技法は、トリュフォーの『恋のエチュード』の様式を借りており、かなりトリュフォーを意識しておりトリュフォーの再来といわれる所以。



『キングス&クイーン(ロワ・エ・レーヌ)(2004) ROIS ET REINE (仏題) / KINGS AND QUEEN (英題)』

監督 : アルノー・デプレシャン
出演 : エマニュエル・ドゥヴォス マチュー・アマルリック カトリーヌ・ドヌーブ マガリ・ヴォック イポリット・ジラルド ノエミ・ルヴォウスキー ジル・コーエン



“トリュフォーの再来”と呼ばれ、才能を遺憾なく発揮し続ける名匠、アルノー・デプレシャン監督の5年ぶりに日本公開される最新作!!



『キングス&クイーン』オフィシャルサイト

映画が生み出したあらゆるジャンル、物語、男女の関係を巧みに利用しつつ大胆に組み合わせ、すべての「過去」を、現在と未来に向けて織り直す、新たな歴史の始まりと言える物語『キングス&クイーン』。名曲“ムーン・リヴァー”の調べにのせて世界中で感動の涙と称賛を呼んだ本作は、複雑な関係を斬新な試みで投げかけながら、家族の終焉と新たな絆の在り方を提示した、映画への新たな挑戦にして稀代の傑作。第61回ヴェネチア映画祭では絶賛とともに迎えられ、同年、最も優れたフランス映画に捧げられるルイ・デュリュック賞を受賞。また、フランスのアカデミー賞とも認識されているセザール賞では、マチュー・アマルリックが主演男優賞を受賞。





サントラ盤「デプレシャンに恋をする」
『魂を救え!』『二十歳の死』はマルク・オリヴァー・ゾンマー音楽、実験音楽風、『そして僕は恋をする』はクリシュナ・レヴィ音楽、室内楽風の弦楽曲で、いずれも佳曲ぞろい。トリュフォーとドルリュー、ヒッチコックとバーナード・ハーマン、フェリーニとニーノ・ロータ、スピルバーグとジョン・ウィリアムス、シャフナーとジェリー・ゴールドスミスのように、監督と作曲家の間に堅固な信頼関係が築き上げられるに違いない。



楽天日記:■フランソワ・トリュフォー『アントワーヌ・ドワネルの冒険』■
~映画に愛をこめて~
も合わせてご覧ください。

楽天日記:♪ワインと女性は熟した方がいい.....『愛の嵐』から『まぼろし』へ―.....シャーロット・ランプリング♪も合わせてご覧ください。

ekato


フランス映画はちょっと苦手、難しそう…なんて思ってデプレシャン未見の方の中には、彼の作品を“高尚なおフランス映画”と想像して敬遠している人もいるかもしれませんね。ところがどっこい、彼が生み出す登場人物はたいてい内省的なモラトリアム青年にありがちな理屈っぽさで“馬鹿げた”行動に走り、恋に友情に失敗を繰り返し苦悩する習性がある。あっちに手を出しこっちに手を出し、理想を偉そうに唱えつつも自分勝手な屁理屈の上乗せばかりで状況はいつまでも好転しないばかりか全く変化をしないし、彼らは苦悩から解き放たれない。私自身自分の逸脱する人生の蒙昧さについて思いを巡らしてみる良い機会となりました。





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